●朝、ポトシの町外れにバス到着。車の下部に預けておいたバックパックを順番に受け取る為に列に並ぶ。
あれ?ないよ。僕とKちゃんのバックパックだけない。
あれ?ないよ。僕とKちゃんのバックパックだけない。
バックパックの受け渡しをしているバス会社の男に問いただすも、何言ってるか全然わかんない。あげくは俺らをおいて走り去ろうとするバス。おいおい。いそいでバスにかけ乗って車を止める。その荷物受け渡しの男はつっけんどんな嫌な奴なのだけど、運転手はそうでもなかった。こっちが出した辞書片手にちゃんと事態の説明をしようとしてくれる。
で、辞書を指さしたところにある言葉。
「間違えた」
説明になっていない。いや。そりゃ何かの間違いであることはバックパックが今手元にないことから容易に判断できる。ここで「正しい」なんてところ指さされてもこっちももっと困るよ。で、さらに詳しく話しを聞くと、同じバス会社で同じくポトシに向かったバスの方に荷物が載っている可能性が高い、ということ。そのバスが着くまで1時間近く待たされる。待っている間にまた逃げようとしたら嫌なので、バスの鍵を預からせろ、と言ってみるも断られる。で、そのバス到着。ドキドキしながらトランクルームを開けると、ありました。そこに俺らのバックパック発見。もう日は昇っていたのだけど、そのトランクルームが開く瞬間ほどマイ・バックパックが輝いて見えた時はなかった。よかった。
●なんだかんだで異常に疲れる。この町では今なにかイベントがあるのか知らないが、宿もなかなか空き部屋見つからない。くたくたになってとりあえず宿みつける。まだ朝8時。標高4000mにあるその町は世界最高高度に位置する都市らしい。そりゃ疲れるよ。ラ・パスでもくたくただったのにそれ以上。
●その上、なぜかその足でそのまま鉱山ツアー。16世紀に銀鉱山が見つかってから一気に発展したというポトシには、いまでもその名残をのこす鉱山があり少人数ながら働いている人達がいる。その鉱山の中、採掘現場などを見学するツアーに参加。別にそんなたいしたことないだろうと、朝飯も食わず参加したらさあ大変。死ぬかと思った。
とりあえず長靴から工事用ユニフォーム、ヘルメットにヘッドライト一式に着替えさせられる。そのままトンネルの中へ。ただでさえ空気の薄い海抜4000mの上に鉱山のトンネル内は進めば進むほど空気が薄い。粉塵と鉱物の匂いもひどい。さらにはしごを上ったり降りたり、高校の部活以来の苦しさ。ココで生まれ育っただろうガイドのおばちゃんは、そんな僕の様子などに気が付くわけもなくどんどん先へ進んでいく。
そしてそんな中で働いている人がいる。コカの葉を口いっぱいに頬張りながら、鉱物混じりに泥水とツーリストのストロボで全身ボロボロになりながらも何も言わずにただただ動く人たち。その鉱夫達のすぐ傍らにどこからともなく現れた高田渡が「鉱夫の祈り」を歌い出した。泣ける。
で、パフォーマンスのダイナマイトがドーンッ!ドーンッ!ドーンッ!と十数発。
ウーファーを積んで六本木を走る車がどれだけ集まっても敵わないその衝撃はかなり恐ろしい。
●くたくたになって宿にもどる。寝る。
●昼間、ネットカフェ行ったり、お土産屋のぞいたり、アイス食べたり、チーズケーキ食べたりする。大好物になったアレキサンダーコーヒーのチーズケーキも今日で食べ納め。いい加減にラ・パスを出発するのです。一週間近く居てしまった。そりゃ長期旅行の人にとっては一週間なんて何のことはないのだろうけど、短期旅行者にとって一週間はかなり痛い。ああそれにしてもラ・パス居心地良かった。ボリビア御飯はまずいのだけれど、中華とか韓国料理とか普通にうまかったし。宿の人もみんな面白かった。
●夜、300kmほど南にあるポトシという町に向かう。Kちゃんと夜行バスの旅10時間。夜景も見納め。
●出発しようと心に誓っていたのに気が付いたら無為に一日おわっていた。
それもこれもポストオフィスのおばちゃんがいけない。
一昨日、昨日で買い集めたお土産がちょっとバックパックに入るような量じゃなかったため、日本に発送することにしたのはいいのだけど、そのポストオフィスのおばちゃんがいけなかった。異常にいばっている。ちゃんとパッキングして運んでいった荷物を全部出せと言う。まあ税関をかねているので違法な物を送ったりしないようにするためだろうから、それはまあ分かる。でもその出し方がいけない。プレゼント用にちゃんと綺麗に袋に入っていたセーターまでもが何の躊躇もなく破った袋から取り出され、なおかつもみくちゃにされてこちらに投げかえされるような有様。いくらなんでも頭に来たのでちょっと小声で「気をつけろよ」と口に出してしまったが最後、おばちゃん切れたよ。動かしていた手を止めこちらをにらみ返してくる。スペイン語なので何言ってるか分かんないが、
「アタシはポリスよ!文句あるんだったら荷物まとめて帰れば!」
みたいな感じだった。クゥ。キュゥ。ゥゥゥゥ。むかつくー。
「ありがとうございます。」
と言っておいた。だってそれしか言えないのだもの。こんな時にスペイン語がはなせれば!もっと勉強しよう。そしてあのおばちゃんにリベンジするためにラ・パスに戻ってくる!と心に誓う。って、戻ってくる為にはとりあえずラ・パスから出なければいけない。
●夜、MさんがDJするというバーに飲みに行く。もう「デスペラード」か「フロム・ダスク・ティル・ドーン」の悪役まんまの強面の長髪タトゥーメキシコ人がいた。もうすんごい怖い。でも意外にいい奴。写真は撮らせてくれなかったけれど。
トイレ、便器の間が異様にせまい。
●物欲爆発2日目。宿の近く、サガルナガ通りのお土産物やさん巡り。エル・アルトほどではないにせよ安い安い。安いよー!お土産は全てボリビアで買うことにする。指人形が相当あつい。
●なんだかんだでラ・パス滞在が延びている。いい加減、明日には出発しなくては。時間がなくなる。
といっても、もうパタゴニアとか全然無理なんです。パタゴニアどころかブエノスアイレスも無理。こういう場合、いつもなら飛んででも行ってしまうのだけど、南米は飛ばずにまわりたいので次回に持ち越し。そんなこといって次回っていつだ?
●シャワーの湯量の問題で髪の毛があまりにうっとおしいので頭まるめる。ラ・パスに着いたときから、頭丸めるならココって決めてた床屋がある。宿のすぐ前、「UNISEX」という名前の床屋。ユニセックス?どういう意図でそんな名前を付けたのか全く分からないくらい店内はユニセックスとは程遠い。嬉しそうに刈るんだ。ユニセックスのおやじは。
バリカンの持ち方が間違ってる。やけに力強い。
宿に戻ると、宿の子供もママに髪の毛切られていた。偶然ですね。かわいいね。
同じ散髪なのにこの違いは何だ。
●で、ジャニスの会員に会った。4年前から会員だというHさん。驚いた。もしかしたら接客してたかも。まさかボリビアでジャニス会員に会おうとは思いもしなかった。意外にジャニスがインターナショナルだと分かったラ・パスの夜。夜景が綺麗。
●ラ・パス郊外のエルアルト(ダウンタウンを囲む標高の高い地域。貧民街。)では毎週木・金と市がたっているらしく、それに行く。目当ては古着市。なんでもゴアテックスのジャケットやらもろもろが破格でゲットできるらしい。ここまではほぼ完璧に物欲を抑えてきたのだけど、もう無理。だってゴアテックスのジャケット40Bs(500円くらい)とからしいのです。
●おそろしく広い敷地、というか町全体の中に無数に露天が並んでいる。車のネジからウサギまで。売っていない物はないんじゃないかしら。古着市の一角だけでも東京ドーム以上の広さがあるらしい。山積みにされた古着は95%は、ボロボロに着古されていたり、理解不能のデザインだったりするのだけど、残りの5%が相当あつい。それを探すのにもう必死。しかしさすがに2時間くらいでもう疲れてきた。だって富士山の上で古着あさっているようなものなのだから疲れてもしょうがない。
気が付いたらバックパックは一杯、さらに両手一杯のビニール袋。
本日の品:
・ジャケットx6
・Tシャツx5
・長Tx2
・ズボンx1
サイズがなくてゴアテックスはゲットできなかったのだけど、これだけ全部で3000円くらい。
物欲が爆発した。
うわーい!
来週の木曜も行きたくなる。ああどうしよう。こうやって人はラ・パスに溺れていくんか。こわいこわい。
●昼、バスでラ・パス郊外へ。月の谷という、なんでもまるで月面のような地表になっている観光スポットへ行く。いや、まるで月面のような地表だ。どちらかと言うよりは、月の谷のすぐ横にあるスタジアムで行われていた草サッカーの試合や、その月の谷の少し先にある動物園の方がよっぽど面白い。
●草サッカー。もしかしたら草サッカーじゃないのかもしれない。爆竹はなるわ。閑散とした観客席で踊ってる人はいるわ。草サッカーでこれだったらプロだったらどうなるのかしら、とそういえば自殺点して殺されたコロンビア選手がかつていた。たしかアメリカワールドカップ。
●動物園。無駄に広い敷地。地元のボリビア人もいるのだけど、彼らの園内における動きを追う限りそれほど動物に執着していないように思える。動物園なのに。公園でアスレチックに興じていたりバギーにのって遊んだり果てはなんかただ芝生で疲れている、といった人たちの数の方が、動物の檻を見て回っている人よりもはるかに多い。そういうわけで園内はやたら閑散としている上に、今日はとても日差しが強い。この暑い昼間ほとんどの動物はもちろんグダグダに寝ている。動きがあったのは猿くらい。にしてもピューマみたりコンドルみたり。うごいてないけど強そうでいい。入口もよかった。今日はこれの隣のライオンの方から入った。目の部分が開くのです。
●で、夜。サタデーナイト。
宿のみなさんに便乗して日本会館で行われているというお祭りに行く。ジャパンソサエティーの建物内に屋台もあれば、矢倉がくまれてその上にちゃんと太鼓ものっている。日系の方々が踊っている。見た目も全くのアジア系からスペイン系までの鮮やかなグラデーションが円を成してアラレちゃん音頭。ボリビア来て焼き鳥食いながらアラレちゃん音頭が聴けるとは思っていなかった。しかもその後には和太鼓のパフォーマンスまであり大満足。
●そのままのいきおいでラ・パス新市街へ。ラ・パスでもやはり若者の盛り場。クラブへ行く。最初ドラゴンフライというナウな名前のクラブに行ったら入れて貰えなかった。どうやら小汚いチーノが大挙して押し寄せてきたので黒服もびびったようです。その後ブラブラと街を歩きながら驚いたのは、行き交う人はほとんど白人であること。昼の旧市街にはほとんど若者らしい若者はいないばかりか白人なんてほとんど観ない。しかし若者が集う夜の新市街には、おまえら昼間どこに隠れとる?というくらいの凄い数の白人ばかり。身なりもみなさんパリッと決めておられまして、上下フリースの僕なんてもうどうしたらいいのでしょう。まあフリースは楽なのでいいのだけど、ペルー、ボリビアでこれまで育んできた南米像がくるっとひっくりかえる。
他のクラブへ。今度は入れた。
ラ・パス中のナウなヤングはみんな来てるんじゃないか、という店内。DJがいて音楽を流しているというのは同じなのだけど、なんだか少し違う。DJの他にMCが常にいる。しかもやたら活動的。最初はまだ時間が早いのでなんか話しているだけかと思っていたのだけど、人が集まり盛り上がりだしてもまだ話し続けている。というよりも歌ってるよ。流れている曲に合わせてラップもするよ。スペイン語がわかったらもうきっと韻も踏みすぎてるんじゃないか、ていうくらい。音楽もメロコアからテクノに繋げてきたと思った瞬間には既に「夢のカリフォルニア」が流れている。クロスオーバーどころか30秒ごとくらいでジャンルが変わる。そんな状況の中、隅の方でビクビクしていると、ボリビアンの中にかなりいい踊りをする奴がいた。かなりアヴァンギャルド。しばらく釘付け。ビール2本のんで酔っぱらっていたので、戦いを挑んでみた。彼の真横で元気玉作ってやった。目が合う。
「オウッ!ゲンキダマァ!」
と彼が言ったかどうかは知らないが、僕に気が付いた様子。そしたらもう彼、なんなら頭でまわるぞこの野郎なみのブレイクダンスを一通り披露した後、僕に指を指してきた。この時、頭をよぎったのはシブヤHの家で観たDVDのシティ・ブレーカーズ(うろ覚え)のパフォーマンス。
え?
オレの番?ごめんなさい。戦わずして負ける。
そしてやはりまた隅の方に戻りビクビクしていたのだけど、呼吸が苦しい。手足がしびれる。さっきちょっと踊っただけなのに酸素が足りない。元気玉つくっちゃったせいだろうか。ただでさえ空気の悪いクラブ店内、しかもここは富士山頂と同じ標高。
「ここ!富士山の頂上ですよー!空気薄いよー!」
目の前で狂喜乱舞しているボリビアン達に伝えたい。
スペイン語ができないってなんて不便。
●ラ・パス2日目。
京都の友達U夫妻がハネムーンでメキシコ・カンクンに来るということが分かった。あわよくばスウィートの玄関マットに泊まれるかもしれないということで、カンクン行きのエアチケットを探す。安かったらカンクンに飛ぶ。旅行の予定は急に変わるものなのです。ボリビアーノ航空オフィスからそのあたりの代理店数社をまわる。チケットはとても高かった。どうやらカンクンには飛べなさそうです。旅行の予定は急には変わらないものです。
●今日もまたアレキサンダー・コーヒーへ。チーズケーキとコーヒー。胃がもたれるくらい濃厚かつ巨大なチーズケーキがとてもうまい。
●そんなこんなで代理店まわりながら街散策。ラ・パス面白い。宿がある旧市街から新市街までで町の様子が徐々に変わっていく。アジアからヨーロッパ。インディヘナからアングロサクソン。
●昼、バスでコパカバーナ出発。
途中チチカカ湖を渡らなければいけないのだけど、バスも専用渡し船にのって湖を渡る。なぜか乗客は別の小舟。どうせどちらも沈みそうなのだからいちいち乗客だけ別にしなくてもいいんじゃないかしら。
●約四時間でラ・パス到着。大都会です。びっくりです。すり鉢状の町は標高が高い周囲が貧民街。すり鉢の底に位置するダウンタウン、サンフランシスコ寺院の近くの宿へ。ここでもまた情報ノートを頼りに得た情報で情報ノートがあるというサンタクルズという宿。クスコで会ったOちゃんやBさんに再会。どうもどうも。
●早速、うまいと評判のアレキサンダーカフェのチーズケーキ食べに行く。うまい。コーヒーも普通にドトール並みの味がする。
●夜、宿のみなさんがペーニャに行くというので一緒に行く。一度くらいは観ておかないという義務感。フォルクローレのディナーショウみたいなものでしょうか、これは。国宝級の人物だという何とかとかいうおじさんは、どうみてもサボテンブラザーズにしかみえないし。フロントアクトのバンドの笛を吹く人はどうみてもポカスカジャンの人にしかみえない。これがペーニャか。なんかベンチャーズの中年コピーバンドのようなノリにしかみえない。
●ボリビアに向かう。プーノからローカルバスでユングーヨへ。国境まで人力タクシーのるも、結局坂道に力尽きた運転手とともに一緒に車を押すことになる。その上、余計なチップを要求してくる運転手。殴るよ。
●国境こえて、ボリビア側の国境の町コパカバーナへ。なんかペルーと雰囲気ちがう。ヒッピー率が以上に高い。野犬率も高い。相当こわい。よだれダラダラの狂犬病ウィルスをもっていると思しき犬もいる。勘弁して欲しい。小さい町をブラブラしてると、プーノで一緒だったKちゃんに遭遇。どうもどうも。コパカバーナの宿、Hostal Florenciaは相当よい。おばちゃんがいい。夕日もいい。